不動産売却をする際に売却を任せる不動産会社との間で契約を締結しますが、その契約のことを「媒介契約」といいます。
媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、それぞれに特徴があるので、自分にはどの媒介契約があっているのか?客観的に判断できるように3種類の特徴と選び方について、わかりやすく解説をいたします。
媒介契約書で結ぶ約束
媒介契約書には大きく分けて5つの内容が記載されています。ここからは、契約書に記載されている内容を項目ごとに詳しく解説をしていきます。
- 媒介契約の種類について
- 不動産会社の義務について
- 不動産会社の業務について
- 契約期間と契約違反に伴う違約金にについて
- 仲介手数料について
不動産売却における媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類が用意されています。「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の主な違いは下記の5点です。
- 複数の不動産会社と同時に契約をできるか
- 不動産流通機構(レインズ)への登録義務があるか
- 不動産会社から売主へ活動報告の義務はあるか
- 売主が自分で買主を見つけることはできるか
- 媒介契約の有効期限は定められているか
それぞれの特徴を解りやすくするため、下図にまとめてみました。
一般媒介契約について
一般媒介契約とは、複数の不動産会社と重複して契約をすることができる契約です。複数の不動産会社と契約をすることで、契約をした不動産会社は、それぞれ同時期に売り出しを開始します。
また、売主が自ら購入希望者を見つけた場合も直接売買をすること(自己発見取引)が可能です。よくあるのは売り出しを開始したら隣人が購入したいと言ってきたり、親族で購入したい人が現れたりと突然舞い込んでくることも良くある話です。
一方で、不動産流通機構が運営するレインズというサイト(不動産会社だけが閲覧できるシステム)への登録義務や売主へ活動報告をする義務がありません。
媒介契約の有効期限に法令上の定めはありませんが、一般的には3ヶ月で結ばれるケースが多いです。
同時に複数社との契約ができるため、一見すると各社が競ってくれて、一番早く売れそうな気もしますが、実態はどうなのでしょうか?契約をする前に一般媒介のメリット・デメリットを知っておく必要があります。
一般媒介のメリットは複数社が売り出してくれることで、不動産会社同士が競ってくれること、多くの見込客の目につきやすいという点がありますが、これは、一転するとデメリットでもあります。
一般媒介を受けた不動産会社の立場からすると、お金と時間をかけても他社で決まってしまうと全てが無駄になるため、一般媒介で受けた案件は「ぶら下げる」という行為を行うだけで、買い客が引っかかればラッキーだし、そうではない場合もコストと販売活動に費やす時間を最小限に抑えられるため、多くの場合は、ぶら下げる以外に販売活動を行いません。
ぶら下げる行為とは、自社サイトや不動産ポータルサイトに掲載するだけで、積極的な販売活動を行わないことをいいます。SUUMOやアットホームなどを見ていると、同じ物件が沢山出てくる(複数の会社が扱っている)ことが良くあるかと思いますが(賃貸版はまとめて表示されますが、売買版は全件が表示される)これらは一般媒介で受けた複数の不動産会社が掲載しているため起こっています。
出す側(売主)としては沢山露出するから良さそうと思われるかもしれませんが、買主の立場では、同じ物件が沢山出てくることをどの様に感じるでしょうか?「売れないのかな?売れ残っているのかな?」と感じる方が多いようです。また、実際に長期間に渡って掲載されていると余計にその思いが強くなるそうです。この様な露出は、いわゆるイメージ毀損が大きいので、デメリットになってしまいます。
一方で、一般媒介のメリットとしては、不動産会社1社による囲い込み行為が起こらない点があげられます。
専任媒介契約について
専任媒介契約とは、不動産の売却活動において、1社とだけ契約ができる(売却活動を依頼できる)契約形態のことをいいます。専任媒介契約でも一般媒介契約と同じく自己発見取引(自ら購入希望者を見つけて直接売買をすること)が可能です。
また、媒介を受けた不動産会社は、媒介契約から7日以内に不動産流通機構が運営するレインズへの登録を行い、登録証明を提示する義務が生じます。活動報告については14日に1回以上の頻度で、売主へメールまたは郵送にて販売活動の報告を行う決まりになっています。
専任媒介契約のメリットは、不動産会社が積極的に販売活動を行ってくれることと、自ら確認をしなくても定期的に活動報告を行ってもらえる点です。
不動産会社の立場からすると、専任媒介契約は言わば独占販売権と同等で、売買が決まれば必ず仲介手数料を得られるメリットがあるため、積極的な販売活動に加え、建物保証、クリーニング、整理整頓、写真撮影などコストがかかる有料サービスを無料で付けてくれる不動産会社もあります。また、媒介を受けた不動産会社が買主を見つけることで買主からも仲介手数料が支払われるため、熱心に販売活動に勤しんでもらえます。
デメリットとしては、両手仲介を狙った囲い込みリスクが発生することです。囲い込みにも程度があるので、詳しくは別の投稿で解説をいたします。
専属選任媒介について
専属専任媒介とは、専任媒介と同じく不動産の売却活動において、1社とだけ契約ができる(売却活動を依頼できる)契約形態のことをいい、専任媒介との違いは3つあります。
一つ目は、自己発見取引(自ら購入希望者を見つけて直接売買をすること)ができないため、自ら買主を見つけた場合にも仲介手数料が発生(不動産会社を介す必要があるため)します。自己発見取引が不可であるという縛りによって、不動産会社は広告費をかけるリスクが減るため更に積極的な販売活動を行うことができるようになります。
二つ目は、専任媒介では7日以内にレインズへ登録することになっていますが、専属専任媒介では5日以内に登録をする必要があります。早期に公開することで全国の不動産会社が販売できるようになるため、早期に売れる可能性が高まります。
三つ目は、活動報告ですが、7日に1回のペース(専任媒介の倍のペース)で報告をする義務が生じるため、売主は販売状況の把握がしやすくなります。
媒介契約によって不動産会社に発生する義務は4つあります。
物件の販売活動について
不動産会社は、媒介を預かると契約の成立に向けて販売活動を開始します。この販売活動の中には、販売図面の作成から始まって内覧や契約条件の調整まで、契約締結に係る全ての活動が対象となります。
契約書の中には具体的に何をするのかまで記載がされていないケースが多い(契約書のフォーマットがそうなっている)ので、契約をする前に具体的な販売戦略(どの様に集客をするのか)を確認しておきましょう。
活動報告について
一般媒介では活動報告の義務が発生しませんが、専属専任媒介と専任媒介では7日~14日に1回の頻度で、売却活動の報告義務が定められています。契約書の中には、何日に1回の頻度で報告をする旨が記されています。報告の方法はメールもしくは文書(郵送)によって行われます。
実際の活動報告はどの様な活動を行い、どの様な成果(問い合わせ)が、どのくらいあったのか具体的な報告が届きます。一般媒介の場合は、報告義務がないため自ら不動産会社へ問い合せをする必要があります。また、この問い合わせも契約している不動産会社の数だけやり取りが発生するため、地味に手間がかかります。
購入申し込みについて
販売活動の中で、購入希望者が現れた場合には、買い付け申込書を預かり、売主に対して遅滞なく報告する義務が定められています。ここでは具体的な日数が定められておらず「遅滞なく」という言葉に留まっています。媒介契約の説明を受ける際には「当日中に速報で報告をして欲しい」など具体的な期限を伝えておきましょう。
レインズへの登録について
一般媒介では、レインズへの登録義務が発生しませんが、専属専任媒介と専任媒介では、それぞれ決められた日数以内に登録を行う義務が発生します。
専属専任媒介では、媒介契約を締結した翌日から起算して5日以内、専任媒介では7日以内に登録をしなければいけません。また、登録をした際に発行される登録証明を交付することも定められています。
ここでの注意点は、レインズに登録はするけど販売図面をあげないという荒業を使う業者もいるので、販売図面も滞りなくレインズに登録しているか確認をしてみてください。では、何故レインズに販売図面を登録しないのでしょうか?囲い込みの兆候でもあるので、注意が必要です。
媒介を受けた不動産会社は、不動産販売価格の妥当性を根拠を持って説明すること。また、売買が成立した際は、契約書および重要事項説明書を作成し重要事項に係る補足資料を市町村役場の窓口から取り寄せます。契約時には、宅地建物取引士によって重要事項説明および不動産売買契約書の読み合わせを行い、宅地建物取引士が記名した上で、これらの書類が交付されます。
その他、売買における登記の手続きや物件の引き渡し(決済)などにおいても媒介を受けた不動産会社がとりまとめ、案内および補助をしながら滞りなく進められるように業務を遂行します。
一般媒介契約では、契約期間に制限がありません。念のため、契約時に契約期間について確認をしておくようにしてください。法令上では契約期間の定めはありませんが、一般的には他の媒介契約と同じく3ヶ月で記載される場合が多いです。
また、一般媒介では契約期間中でも中途解約をすることが可能です。解約を希望する際は契約先の不動産会社に対して通知を行うことで契約が解除されます。通知方法は電話でも構いませんが、メールや書面に残しておいた方が後々トラブルにならないので、おすすめです。その他、物件が売れた際には、一般媒介契約をしている全ての不動産会社に対して通知が必要になります。なお、どのタイミングで通知をすれば良いかは、物件を売却してくれた不動産会社が教えてくれます。
専属専任媒介と専任媒介の場合、契約期間は最大で3ヶ月以内と定められています。契約の自動更新は認められていないため、更新を希望する場合には、有効期間の満了に際して文書で申し出をする必要があります。更新時には不動産会社側から案内があるので、更新の有無を伝えれば、書類を準備してくれます。
また、専属専任媒介と専任媒介では、契約期間中において自己都合による中途解約が認められていません。自己都合による解約に対しては違約金が発生するため、注意が必要です。ただし、不動産会社に非がある場合には、違約金は発生しません。不動産会社の非とは、売却活動において不正や不当な行為を行い是正勧告に従わない場合をいいます。
なお、違約金の請求内容は、媒介契約の履行のために要した費用で、違約金の上限は約定報酬額となっているため、例えば3,000万円で売り出していた物件の場合、3,000万円×3%+6万円=96万円(税別)が違約金の上限額となります。
売買が成立すると約定報酬(仲介手数料)が発生します。契約書には支払う金額と支払う時期が記載されているので、念のため、金額が正しいか確認をしてください。
仲介手数料は、物件価格によって変動します。「物件価格×手数料率」によって計算されますが、+2万円や+6万円は、200万円以下や400万円以下の部分を簡易計算した金額になります。例えば3,000万円で売れた場合、3,000万円×3%+6万円=96万円(税別)が仲介手数料です。
物件価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下の場合 | 5%以内(税別) |
200万円以上、400万円以下の場合 | 4%+2万円以内(税別) |
400万円以上の場合 | 3%+6万円以内(税別) |
また、支払時期については、売買契約時と物件の引き渡し時(決済)の2回に分けて支払う形態が多いですが、物件の引き渡し時に纏めて支払うケースも少なくありません。
売主は、売買契約時に買主から手付金を受け取ります。手付金の金額は物件価格の5%程度です。この手付金の中から不動産会社へ仲介手数料の半額を支払い、残りの半額は物件の引き渡し時(買主から物件代金の残額をもらう時)に支払うことになります。
下記のグラフは「公益財団法人 不動産流通推進センター」が公開している2021年に全国で売買された物件成約報告件数の推移から抽出したデータです。
専属専任媒介で成約した割合は15%、専任媒介で成約した割合は48%、一般媒介で成約した割合は37%でした。このグラフで分かることは、6割以上の方が1社媒介である専属専任媒介と専任媒介で売却活動を行っているということです。
どの媒介契約を選ぶべきか?
媒介契約ごとにメリットとデメリットが存在するため、悩まれる方が多いのですが、媒介契約の種類で悩まれている方には、専任媒介契約をおすすめしています。理由は、実数でも一般媒介より成約率が高いことと、付随されるサービスが多いことに加えて管理が楽なことなどです。
イエウルサポートでご売却をされる場合、専任媒介でのご契約となりますが、一般媒介で享受できる「情報が市場に広まる」という最大のメリットと、専任媒介の「窓口が1社で便利」というメリットの両方を兼ね備えた販売方法となるため、売主様にとっては最善の販売方法(契約形態)だと自負しております。詳しくは「片手仲介のこだわり」をご参照ください。