【9ステップ】不動産売却の流れと対応方法を解りやすく解説

簡単9ステップで不動産売却の流れを解説

自宅や相続した不動産など、はじめて不動産を売るという方が多いのではないでしょうか?不動産売却を考えた時に何からはじめれば良いのか分からないという声をよくお聞きするので、不動産売却の流れを9つのステップに分けて項目毎に解りやすく解説いたします。

また、失敗しないためにやっておきべきことや不動産会社をどの様に選べばよいかなど、裏話も交えながら具体的に解説したいと思います。

特に不動産会社の選び方に関しては、不動産会社からすると知られたくないようなことも含め、具体的な選び方を記載していますので、是非、参考にしてみてください。

売却する不動産の相場や不動産会社について自分なりに調べる。

今はインターネットを使って調べたいことを簡単に調べられる時代です。不動産価格や不動産会社についても様々な角度から調べることができるので、まずはご自身で調べてみましょう。調べ方はこのページ内で詳しく説明をしていますので、参考にしてみてください。

複数の不動産会社に相談・査定をしてもらう。

実際に不動産会社に査定をしてもらいましょう。査定には机上査定と実査定(訪問査定)がありますが、査定をしたからといって売り出しを急ぐ必要はありません。不動産会社の営業に惑わされずにご自身のペースで進めてください。

不動産会社を選定して媒介契約を締結する。

任せて安心できそうな不動産会社が見つかったら、媒介契約を締結します。媒介契約には3種類の契約形態があるので、それぞれの特徴を事前に理解しておきましょう。

不動産会社が販促活動を開始する。

いよいよ売却活動の開始です。ここのパートでは、売主がやることはありませんが、事前に約束をした販売活動が実際にどのくらい行われているのかチェックをしておきましょう。

内覧の対応をする。

居住したまま売り出すパターンと空き家の状態で売り出すパターンがあり、居住したまま売り出す場合は、スケジュールの調整や当日の対応などが発生します。売主の声を直接聞きたい買主は多いので、チャンスです。

購入希望者の属性・条件を確認する。

購入希望者が複数現れた時にどの様に選ぶのが適切なのか、属性や条件、購入希望者を連れてきた不動産会社の思惑などを交えて解説いたします。

売買契約書を締結する。

購入希望者が決まったら売買契約を結びます。不動産会社は、早期に固めるために最短のスケジュールで進めることが多いです。

決済で売買代金を受け取り、引き渡しをする。

決済では、買主は売主に対して売買代金を含めた支払いを行い、売主は買主に対して物件を引き渡します。当日は司法書士立ち合いのもと買主が住宅ローンを借り入れる銀行で行われることが通例となっています。

管轄税務署へ確定申告を行う。

確定申告は、不動産を売却した日が属する年の翌年に行います。毎年行われている2月16日から3月15日の申告期間内に確定申告を行ってください。

不動産売却の全体の流れは、上記のように大きく9つのステップに分けることができます。ここからは、各ステップごとの詳細を解説していきます。

STEP1.相場や不動産会社の調べ方

まずは、自宅がどのくらいの金額で売れそうなのか(ざっくりした価格)ということや、どこの不動産会社に依頼すればよいのかなど、自分なりに情報を集めてみましょう。インターネット上には沢山の情報が溢れていますが、本当に必要な情報をどの様に取得するのか具体的にご説明いたします。

相場や不動産会社の調べ方

不動産の相場価格を調べてみる

今、自宅がいくらくらいなのか?相場価格を調べるには、以下の2点を参考にしてみてください。

  1. 近隣で、売り出している類似物件の価格(販売中物件の価格)
  2. 近隣で、過去に売り出されていた類似物件の成約価格(過去成約の価格)

類似物件の売出中価格を調べる

実際に売り出されている価格を調べるには、SUUMOやアットホーム、ホームズなどの不動産ポータルサイトから類似した物件を探してみましょう。中古戸建や中古マンションなどを同じ町名で探してみて類似物件(築年数、広さ)が幾らくらいで売り出されているかを確認してみてください。同じ町名にない場合には、隣接する町名や最寄り駅から同じくらいの徒歩圏内で探してみましょう。

戸建てや土地の場合は、あわせて近隣の新築価格も確認しておいた方が良いでしょう。新築戸建の条件と比較して勝る部分が多ければ、驚くことに新築価格より高くても売れてしまいますが、自己評価は甘くなりがちなので、注意して比較するようにしてください。

土地の場合も新築の建物を建てた時の総額として相場から離れていないか?など、多角的に見ておくと実際の売り出し価格に近い数値が見えてきます。

また、Google検索を使う手もあります。マンションだったら「売りたいマンションの名称」でGoogle検索を行うとマンションの相場を教えてくれるサイトやマンションの購入希望者を集めている不動産会社のサイトなどがヒットします。

土地や戸建ての場合は「中古戸建+地域名」「土地+地域名」で検索をすると該当する物件が沢山出てきますので、類似した物件を探してみてください。

類似物件の売出中価格を調べることで、だいたいの相場は掴めるはずですが、更に詳しく調べておきたい場合は、近隣における過去の成約価格も調べておきましょう。

類似物件の過去成約(価格)を調べる

過去に売り出されていた類似物件の成約価格を調べるには、不動産流通機構が運営するレインズと呼ばれるサイトから確認できますが、レインズは不動産会社しか見ることができません。

そこで、不動産流通機構が一般の方にも開放している情報ソースとして「レインズマーケットインフォメーション」と呼ばれるサイトがあります。こちらのサイトからは詳細までは見れないものの、ざっくりとした価格を調べるには使えます。また、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」と言われるサイトでは、直近1年間の売買データ(実際に売買をした人のアンケートがデータソース)を確認することができます。サイト内の不動産取引価格情報検索から検索を行ってみましょう。

どんな不動産会社が良いのか調べてみる

不動産会社はどこがいい?不動産売却において、もしかするとここが一番の悩みどころではないでしょうか?忖度なしにどの様に選ぶのが一番良いのか?色々な考え方があると思いますが、私なりにベストなアイデアをお伝えしたいと思います。

大切なポイントは3つで、①地域に詳しい担当者が担当してくれるか?②建物や設備を保証してくるサービスは付帯するか?③全力で集客をしてくれるか?の3つに絞られます。

それと、ひとつだけ付け加えておくと不動産売却において会社の大小はあまり関係がありません。大手には大手の良さ、中小には中小の良さがあります。会社の看板ではなく、担当者の力量と姿勢を軸に不動産会社を選びましょう。問題に直面した時の対応に差が出ます。

地域に詳しい担当者が担当してくれるか?

地域に根ざした不動産会社であるかという点は大切なポイントです。相場観や需給バランスなど地域のことを良く知っているということが大前提になろうかと思います。ただし、お住まいの地域にある不動産会社だとしても担当者が地域のことを知っているかという点は更に大切なポイントです。

例えば、鎌倉に店舗がある不動産会社で、鎌倉の物件を沢山取り扱っている会社であっても担当者が東京から通っていて鎌倉に縁もゆかりもない担当者と鎌倉に住んで長い担当者(なんなら地元の方)では結果が全く変わってきます。

もちろん東京に住んでいても鎌倉に詳しい方もいるでしょうし、東京の会社でも鎌倉に住んでいる担当者もいるでしょうから、この点については、訪問査定の時に会話の中で確認をするのがよろしいかと思います。特に大手の場合、支店は多いですが、従業員の支店間ローテーションも多いため、注意が必要です。

地域に根ざした不動産会社というよりも地域のことを良く知っている担当者に出会えるかという点を頭の片隅に置いておいてください。

建物や設備を保証してくれるサービスが付いているか?

不動産を売却をする上で、売主にとっても買主にとっても不安に思われるポイントの一つとして、物件の不具合について気にされる方が多くいらっしゃいます。

物件の引き渡し後に構造上の問題、雨漏り、給排水管、シロアリによる不具合が発生した場合、売主は買主に対して補償することを契約上義務付けられています。この保証を付けていない会社も多くあるので、この点は事前にしっかりと確認するようにしてください。

全力で集客をしてくれるか?

不動産会社は売主との媒介契約締結後に集客を開始します。主な集客方法は①ストック顧客への紹介(既に抱えている購入希望者への紹介)②自社WEBサイトへの掲載、③SUUMO・アットホーム・ホームズなど不動産ポータルサイトへの掲載、④レインズ(不動産流通機構)への掲載、⑤近隣地域へのポスティング、⑥近隣地域での源泉営業(最近では減っている)⑦他社(不動産会社)のWEBサイトへ掲載(他社のストック顧客への紹介を含む)の順番となりますが、98%の不動産会社は⑦を行いません。

なぜ⑦を行い、広く購入見込客を集めないのでしょうか?それは、購入者を自社で見つけることによって売主からも買主からも手数料をもらえるから(いわゆる両手仲介といわれる形式)です。

しかしながら、広く多くの購入見込客を集めることが「早く高く売る最善方法」であるため、他社に広告およびストック顧客への紹介をしてもらった方が、早く高く売れる可能性が高くなります。

そのため、訪問査定の際に「媒介契約の前提条件として他社の広告掲載を認め、積極的に集客をしてくれるか」を確認してみると良いでしょう。また、①~⑦の順と書きましたが、早い会社では⑦までを1~3営業日以内に実行してくれます。なお、レインズ(不動産流通機構)への掲載は専属専任媒介では5日以内、専任媒介では7日以内に掲載するルールとなっていますが、早い会社では即時掲載をしています。

その他、売買金額が高い場合には、専用サイトを作成してWeb広告を積極的に出稿してくれる担当者(私もやっています)も少なくありません。

STEP2.不動産会社の訪問査定

不動産会社の訪問査定

訪問査定までに準備しておく書類

訪問査定に来てもらう不動産会社が決まったら、以下の書類を準備しておきましょう。納税通知書以外は、購入した時に受け取った書類一式を準備しておけば、だいたい入っています。

戸建の場合

  1. 固定資産税・都市計画税の納税通知書
  2. 土地の確定測量図(筆界確認書)
  3. 建物の検査済証
  4. 設計図書
  5. 間取り図
  6. 住宅性能評価を受けた物件の場合は、評価書

マンションの場合

  1. 固定資産税・都市計画税の納税通知書
  2. 間取り図
  3. 住宅性能評価を受けた物件の場合は、評価書
  4. 耐震基準適合証明を取得している場合は、適合証明

訪問査定で不動産会社に聞かれること

不動産会社に確認される点

不動産の売却理由について

不動産を売却する理由について、ほとんどの買主が確認をしてきます。不動産会社へは極力詳しく説明をした上で、伝えて欲しくないことがあれば、事前に相談をしておきましょう。売却理由の告知義務は売却する不動産において事件や事故などによる隠れた瑕疵がある場合には、事前に伝える必要がありますが、それ以外では必ず伝えなくてはいけないという義務は発生しません。しかしながら、ほとんどの買主は売却理由について聞いてきますので、その時にどの様に回答をするのか事前に不動産会社と話し合っておく必要があります。

引渡時期と移転先について

予め売却する不動産の引渡しが可能なスケジュールを決めておく必要があります。そのため、売却後の移転先についても売却前に考えておく必要があり、売却を先行するのか、購入または賃貸への引っ越しを先行するのかを含め、査定に来た不動産会社に相談をしておきましょう。

設備について

床暖房、空調関係、キッチン、お風呂、洗面、トイレ、給湯など各設備や設備に付いている機能についての確認があります。

建物や設備の不具合について

雨漏りや床の傾き、建具の建付け、シロアリなど建物に関する不具合およびキッチン、お風呂、洗面、トイレ、給湯、電気などの設備に関する不具合(もしくは気になっている点)がある場合には、事前に不動産会社へ伝えておく必要があります。また、弱みとなるウイークポイントに対してどの様に対応するべきか担当者によって大きく変わってくる点でもあるので、担当者の対応に注視してください。

住宅ローンの残高

不動産の売却後、手元に残る資金で住宅ローンの残債を払えるかという点について確認をしておきましょう。足りない場合には物件引き渡し時に現金で準備(口座に)しておく必要があるので、売却後の資金計画もしっかり立てておきましょう。この辺りも不動産会社が明細を作成してくれるはずなので、不安な場合は、訪問査定時に相談をしておくことが賢明です。

増改築を含めたリフォーム履歴について

過去にリフォームをしたことがある場合、どこをいつ頃リフォームしたのか訪問査定までにまとめておきましょう。大掛かりな増築をされた場合には、確認申請を行ったかもあわせて確認が必要です。良くあるパターンとして、カーポートを増築したけれど、確認申請はおこなっておらず、建蔽率(けんぺい率)オーバーになってしまっているケースが少なくありません。

電気、ガス、水道、下水の状況について

電気、ガス、水道、下水のライフラインの敷設について、ガスは都市ガスかプロパンガスか?水道も公共の上水道が引かれているか?下水については公共下水道を利用できる状態か?浄化槽や汲み取り式になるか?など、特に更地の土地を売る場合に前面道路まではきているけど、売却する物件には接続されていないケースなどもあるので、ライフラインの情報も事前にまとめておくとスムーズです。

書類関係の確認

戸建(土地を含む)とマンションそれぞれこの章の冒頭で解説をした書類関係を準備しておきましょう。ほとんどの書類は、購入した際に受け取る書類一式の中に入っているはずです。

訪問査定で不動産会社を見極める

サービス内容について

契約不適合責任に関する保証について

不動産売却における不安要素の一つとして、引き渡し後の不具合について、売主がどこまで保証をするのかという点だと思います。STEP1の2章へも記載した通り、訪問査定に呼びよせる不動産会社は保証サービスをつけてくれる業者であることが前提になっていますが、保証期間や適用範囲など、保証の内容についても詳しく聞いておきましょう。

雨漏り、構造、シロアリなど、それぞれに各200万円程度の保証がついていれば十分だと思いますが、設備保証も付いているのか?いつからいつまで保証されるのか?何回でも利用できるのか?など細かく確認しておくと良いでしょう。

クリーニングサービスなど

物件引き渡し後の室内クリーニングは気になるところですが、高く売りたいとお考えであれば、実は売り出す前が肝心です。よくあるケースとして、室内が散らかっている、荷物が多い、片付ける時間がないなどの理由から販売用の写真を撮らずに外観と間取り図だけで販売しているケースを見かけることがあります。何としてでも高く売りたいとお考えの場合は、室内写真はマストだと思ってください。また、内覧に来た時の印象でも結果が変わってきます。そこで、写真撮影のために片付けやクリーニングをサービスしてくれるか不動産会社の担当者に聞いてみましょう。クリーニング以外では、庭の雑草などが生い茂っていると印象が良くありません。クリーニングを含めどこまでサービスしてもらえるのか?確認だけしてみてください。

仲介手数料について

仲介手数料がいくらになるか聞いてみてください。その時に「買主からも徴収するのか?」ということを含め「仲介手数料の仕組みについて教えてください。」と質問をしてみましょう。

担当者によっては仲介手数料を値引きしてくれる場合もあるので、仲介手数料については必ず訪問査定中の会話の中で、話題にしてください。多くの営業は、その担当者の裁量で値引きできる枠を持っています。

ただし、物件価格が低いと値引き対象にならないケースが多いです。通常は「物件価格の3%+6万円(税別)」となっています。例えば3,000万円の物件なら96万円(税別)の手数料が発生し、物件が売れてから(物件代金から)支払います。

相続案件の場合

不動産価格が高く譲渡利益が大きい場合は、不動産のみならず総合的な相続相談に発展することが少なくありません。そんな時に相続を専門にしている税理士法人と適切にアライアンスが組まれていて、相続税対策についても対応してもらえるかということを確認しておきましょう。一般的な不動産相続(売却後の利益が3,000万円以下や相続不動産の有効活用など)の場合は、不動産会社の担当者レベルで十分に相談できるはずです。

売り方について

価格戦略について

不動産売却における価格設定は、タイミングが重要な要素となり、売却される地域において販売中の類似物件がどのくらいあるのか?どの位のペースで出現するのか?過去に幾らくらいで売れているのか?騰落率はどの程度か?グレードや立地の違いなど競合する物件はあるか?その地域において需給のバランスが崩れていないか?などをみて売出価格の提案がされます。

この価格が安ければ売主は勿体無い訳ですが、高過ぎれば売れずに売れ残りのイメージがついて、更に売れないという負のスパイラルに陥ってしまいます。この様なことがないように適切な価格設定ができているか担当者の価格戦略について説明を受けるようにしてください。そして何よりこの時に自分で調べた価格とどのくらい差があるのかも確認するようにしましょう。

販売戦略について

STEP1の2-3(全力で集客をしてくれるか?)の中でも触れていますが、集客について確認をしておきましょう。多くの不動産会社は両手仲介を狙うため、自社のサイト以外(他社サイト)への広告を行いません。他社に広告を許して他社が買主を連れてきた場合、買主から手数料をもらえないからです。

しかしながら当然に他社のサイトにも掲載をして広く購入希望者を募った方が(沢山の購入希望者を集めることで)高く早く売れることは間違えありません。沢山の人に見てもらい検討してもらうことが最善の方法であるはずです。では、どうしたら不動産会社は広く広告をしてくれるのでしょうか?

訪問査定に来た担当者へこの様に聞いてみてください。「御社以外に例えばリハウス、リバブル、住友不動産、野村不動産などのサイトに掲載してもらえますか?」と。

色々と理由をつけて掲載ができないことを伝えてくるか、できるけど〇〇といったネガティブなことを伝えてくるでしょう。できることなら二つ返事で「YES!」と答えてくれる担当者を選べば間違えありません。

全力で集客をしてくれる不動産会社の場合、上記以外にも15件から20件くらいの集客力がある不動産会社に対して広告依頼を出してくれるはずです。

見せ方について

高い価格で早期に売るためには、①沢山の人に知ってもらい(露出を増やす)②沢山の購入希望者に内覧へ来てもらう。そのためには物件の見せ方や紹介方法が重要なポイントになってきます。

高く早く売ってくれる不動産会社は写真の撮り方やお部屋の整理整頓についてこだわる方が多いです。販売時に居住中の場合は、極力生活感が無い状態に近づけられるか?難しい場合にはCGなどを使ってそれらを実現させるなど、積極的に提案をしてくれるでしょう。

実例として、とある敷地約100㎡ほどの戸建住宅の媒介をお預かりした時のお話をしてみます。

売主はローン残高の関係もあり、最低でも2,500万円程度で売れないと売却は厳しいという中で、一括査定に申し込んだところ、4社から提示された机上査定の金額が約1,800万円程度であったことに愕然としたそうです。

そこで、別の一括査定を利用したところ、当社が引っかかり、査定額は3,800万円でした。何故、ここまで金額が違うのか?不思議に思ったのですが、複数社ある中で、当社以外にもう1社が3,700万円の机上査定を出されたそうです。

事前のヒアリングでは、小学生と中学生の男の子がいらっしゃることもあり、内装は相当傷んでいるとの情報をいただいた上で、訪問査定をすることになり、ご自宅へお伺いいたしました。

築25年の戸建て住宅は、外観や玄関ドア周りを見る限り、小奇麗で悪くないなと思いながら中へ入ってみると壁の穴、クロスの汚れ、クロスの剥がれ、フローリングの剥がれや擦り切れ、建具の塗装剥がれ(擦り切れ)や、水回りは全般的に使用感が強くクリーニングを入れたとて、この状態で販売するのは厳しい(かなり割安で売却までの時間がかかる)というのが正直な印象でした。

しかしながら良い点としては、今どきの間取りにレイアウト変更が容易にできそうであることや、日当たりも良く、駐車場も2台停められるなど、素材としては良いところが目立つ物件でもありました。

そこで当社から売主様へは、3,300万円で着地できるように3,350万円万円で売り出し、買主が3,800万円くらいで綺麗な状態で住めるように500万円~600万円でリフォームをした時のCG画像(15枚程度)とリフォームの見積書と購入時の資金計画をあわせて買主にアプローチする方法を提案したところ、受け入れていただきました。

その結果、この方法が上手くいき、約1ヶ月ほどで満額買付となりました。ちなみに3,700万円を提示されていた他社様は訪問査定の結果、2,700万円になったそうで、弊社をお選びいただいたそうです。

この様に少し見せ方を変えるだけで、得られる結果が全く違ってくることもそうですが、そもそもの査定金額についても価格戦略の章で述べている通り、多角的に地合いをみることで、適正価格が見えてきます。

中には査定そのものをSaaSシステム(不動産会社向けに提供されている外部の有料システム)だけに頼って売却査定を提案してくる不動産会社も少なくありません。しかしシステムだけでは正しい価格は見えません。

STEP3.媒介契約の締結

不動産会社と媒介契約を結ぶ

不動産会社をどこにするか決まったら、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約書には物件情報、販売価格、不動産会社が成約に向けて行う業務や義務、成約した時の報酬などについて記載されています。

媒介契約には専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の3種類があり、それぞれの特徴は以下の通りとなります。高値売却を狙う場合は専任媒介がお勧めです。

どの媒介契約が自分に合っているのか?媒介契約について詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。

媒介契約の選び方【媒介契約の選び方】3種の特徴・デメリット・注意点を解説
専属専任媒介専任媒介一般媒介
自分で買主をみつけるできないできるできる
複数社との同時契約1社のみ1社のみ複数社可
売主への活動報告1週間に1回以上2週間に1回以上報告義務なし
流通機構への登録義務ありありなし

STEP4.売却活動の開始

購入検討者を増やすには第一印象が重要

媒介契約を締結すると不動産会社は売り出しを開始します。売り出しには、宣伝用の写真撮影が必要となるため、居住中の場合は担当者と相談の上、どこまで片付けをして撮影を行うのか事前に決めておくと良いでしょう。また、写真の印象で内覧数は劇的に変わるので、天気が良い日(陽当り)を選んで撮影することをおすすめいたします。

宣伝用の写真は各種媒体へ掲載する前に確認をしておくと間違えがありません。最初に写真を見て受けた印象が大切です。担当者が撮影した写真が気に入らなければ、自分で撮った写真を使ってもらうこともできますので、広告掲載前に写真の確認をしてみてください。

その他、不動産会社と打ち合わせてきた通りに売却活動が行われているかは、不動産会社から定期的に活動報告があがってくるので、報告書の内容と実態をしっかり確認をするようにしてください。

STEP5.不動産売却における内覧の対応

スケジュールの調整

売り出し開始前に予め1ヶ月分のスケジュールを不動産会社の担当者へお伝えしておきましょう。そうすることで、不動産会社は問い合わせがあった際にその場で内覧の設定を確定できるからです。機会損失を減らすためにもスケジュール調整は重要な要素といえます。

内覧の対応

内覧の当日は、プロである不動産会社の担当者が主導して行ってくれます。

売主の役割は売主にしか分からない生活環境について買主から質問された時の対応です。買主からよく聞く言葉として、売主から生の声を直接聞けたので安心できたというお言葉です。

例えばマンションでも戸建でも近隣住民のことは気になるものです。また、地域のルールや保育園の状況、普段の買い物のことまで、実際の生活実態について売主から話を聞くことで、ご自身が住んだ時を想像しやすくなります。

その他、物件の特徴などアピールするべきことやウイークポイントとなる点などは事前に担当者へ伝えておくと良いでしょう。

また、住んでいない物件や土地の場合などは、売主が立ち会う必要はありませんので、不動産会社の担当者に任せておけば問題ありません。

STEP6.購入希望者の属性と条件を確認

購入希望者は、内覧後、不動産会社に対して買付申込書を提出します。

買付申込書とは、この物件をこの条件で購入したいという意思を表明する書類です。この書類に法的拘束力はありませんが、基本的には売主が受け入れたら契約手続きに進むことを前提に提出される書類となっているため、安易に出されることはありません。

この買付申込書ですが、例えば土日に6件の内覧があり、その内、2件から買い付けが入った場合、売主はどの様にして選ぶべきでしょうか?先ずは、2件の買い付けについて、それぞれの希望条件と購入希望者の属性を確認してください。重要な点は支払い能力が足りているかという点です。

担当者は買い付け申込書を受けても住宅ローンの事前審査が承認されるまで正式な申し込みとしては受け付けません。不動産会社としても契約後に支払い能力がなかったら困るので、支払い能力の有無を事前審査で計ります。

購入希望者が住宅ローンで購入する場合には、売買契約後に借入を予定している金融機関へ本審査を申し込みます。本審査が無事に承認されれば問題ありませんが、ここで非承認となり、他行でも承認されなかった場合、もう一度、募集→内覧→契約と、全てやり直しとなってしまうリスクがあるため、支払い能力が高い人を選んだ方が合理的といえるでしょう。

ただし、内覧でお会いしてお話をしてみると相性もあり、この人に買ってもらいたいと思うことも少なくありません。そんな時は、より慎重に支払い能力を確認することをおすすめいたします。

具体的には勤務先、勤続年数、年収、現在の借入状況などです。審査が承認される可能性が高い人(社会的信用力が高い人)を選んだ方が無難であるということになります。属性については担当者に詳しく確認してもらうようにしてください。

ここで不動産会社としての思惑ですが、例えば、売主側の担当者が両手仲介狙っている場合に自社の顧客と他社の顧客が同時に申し込みを入れたとします。売主として注意する点は変わらず購入希望者の属性なのですが、担当者は、自社の顧客を選んで欲しいため、自分が連れてきた顧客を推してくるでしょう。こんな時こそ、冷静に購入希望者の属性を見極めてください。

売主の利益追求を考えている担当者の場合は、売主に上記の様な説明をしながら、どの様に選ぶことが適切かを予め説明してくれるはずです。適切な購入希望者を選べます。

STEP7.不動産売買契約の締結

不動産売買契約の手続き

購入希望者の中から買主が定まったら、不動産売買契約を締結します。契約には売主(物件名義人)と売主側の不動産会社および買主(登記予定者)と買主側の不動産会社が集まって契約手続きが行われます。

売買契約では、買う主側に対して重要事項説明の読み合わせが行われ、終わり次第、売主が合流をして売買契約書の読み合わせが行われます。契約時に売主は買主から手付金を受け取ります。手付金の金額は、概ね売買価格の5%程度となり、例えば3,000万円の物件であれば、5%の150万円が手付金となります。

また、スケジュールの調整やその他の理由で、どうしても一同に集まれない場合は、買主側と売主側に対して契約手続きを行う持ち回りという方法で契約手続きを終わらせる事も可能です。

STEP8.決済および物件の引き渡し

決済では、売買契約時に設定された引き渡し日に残代金の受け取りと物件の引き渡しを同時に行い、売主から買主へ所有権が移転します。

売却する物件に住宅ローンが残っている場合には、残代金の受け取りと同時に借入れている金融機関への返済が行われます。住宅ローンを借り入れる際に設定された抵当権の抹消は、事前に司法書士が手続きを進めてくれているので、決済日当日に売主が何かをするようなことは発生しません。

事前の準備と当日の手続きは不動産会社と司法書士および金融機関が準備をしてくれているので、売主は指定された持ち物を持参して決済場所(多くは買主が借入れる金融機関で行われる)で手続きを進めるだけとなります。

STEP9.不動産売却に伴う確定申告

譲渡所得を確定申告

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、確定申告の手続きを忘れないようにしてください。譲渡所得は給与などで得た所得とは分けて課税される仕組みで、確定申告が必要となります。不動産を売却して損失が発生した場合は、所得税と住民税を減額することができる制度もあるので、いずれとしても不動産売却をした場合には、確定申告を行うことをお勧めいたします。