不動産売却の一括査定は、査定価格にご注意を!

不動産一括査定サイトの査定価格にご注意を!

タイトルの通り不動産売却の一括査定を利用される際、注意するべき最重要点は「査定価格」です。

基本的に不動産売却の一括査定サイトで査定を行うと実際の相場価格よりも遥かに高い金額が提示され、更には高値を更新し続けているような状況です。

では一体、何故その様なことになっているのでしょうか?この記事では、不動産売却の一括査定サイトで提示される査定価格について詳しく解説をいたします。

不動産売却の一括査定の仕組み

不動産売却の一括査定サイトの査定価格が高額になる理由について、物件価格を知りたい利用者側(売却検討者)ではなく不動産会社側(査定価格を提示する側)のお話をしてみます。

一括査定サイトを運営しているのは不動産会社ではない

不動産業界に限らず、一括査定は様々な業界(引っ越し見積もり、車買取、リフォーム等)で導入されているサービスですが、不動産売却の一括査定サイトの多くは不動産会社ではなく、その多くがWebサービスを提供している会社が運営しています。

例えば、HOME4Uは、NTTデータ・スマートソーシングというWEB会社が運営をしていますし、イエウールは、SpeeeというWEBマーケティングの会社が運営をしています。

不動産売却の一括査定サイトの運営会社は、Web広告(主にコンテンツSEO・リスティング広告・ディスプレイ広告・アフェリエイト広告)によって物件価格を知りたい利用者から査定の申し込み(無料)を募り、申し込みがあるとその情報を不動産会社に販売する仕組みになっています。

不動産会社は査定依頼者の情報を買っている

不動産会社は、登録している一括査定サイトから査定依頼者の情報を1件あたり、15,000円前後で購入しています。価格は、一括査定サイトや利用する地域によって異なりますが、1件ごとに10,000円~18,000円程度(15,000円前後)となっています。

また、どこの一括査定サイトも1件の申し込み(査定依頼者情報)を6件から8件程度の不動産会社へ販売しているため、一括査定サイトは、1件あたり90,000円から120,000円(6万円~14.4万円)の売上げになっている計算になります。

そして情報を購入する不動産会社側は、自社を除く5社から7社がライバルとなりますが、当然、査定をする側(査定依頼者)も1つの一括査定サイトしか使っていないという保証はありませんので、ライバルは未知数ということになります。正にカオスです、、。

今すぐ売りたい人は少ない

そんな不動産売却の一括査定ですが、査定をする人の多くは「今すぐ売りたい」訳ではありません。自宅を売却するにしてもまずは「売れる金額」を知りたいだけという方がほとんどではないでしょうか?

例えば住み替えることを検討し始めた時に考えるのは「住み替え先」「住み替え先での生活環境」「住宅ローンのこと」「売るのが先か買うのが先か」などが挙げられますが、何といっても「自宅を売ったら幾らになるか?」ということを起点に考える方が多いのは、当然と言えば当然だと思います。

そして「自宅を売ったら幾らになるか?」から「売る」という思考の推移には人それぞれリードタイムが異なります。

今すぐ売りたい人は5%くらい

一括査定サイトからお申し込みをいただくお客様の中で、今すぐ売りたい方は、全体の5%くらいで、媒介契約まで進めるのは2%くらいです。(当社調べのため、もっと歩留まりが良い不動産会社さんもあれば、歩留まりが悪い不動産会社さんもあるかと思います)

つまり、100件(15,000円×100件=150万円)やって2件の媒介契約を結べる計算になります。残りの98件の内、追客によって媒介契約を結べるのは全体5%前後くらいです。

媒介契約までには時間がかかる

今すぐ売りたい人は全体の5%くらいですが、今すぐではないけど、売る方向で考えている人は半年から1年くらいで媒介契約となります。

その間も不動産会社は定期的にコンタクトを取ってきます。手間はかかりますが、高い金額で売却検討者の情報を購入しているため、不動産会社は連絡する手間を惜しみません。(惜しまないはずです)

高い獲得コストを下げるため、追客をすることで、少しでも媒介率を上げるしかないからです。

DX化が進んでいる不動産会社ではマーケティングオートメーションなどのSaaSシステムを利用して追客を自動化している会社も少なくありません。

全く売る気がない人も多い

困ったことに全く売る気はないけど金額を知りたいだけの方がいらっしゃいます。

売る気がないことをハッキリと申されるお客様はまだ良いのですが、電話に出ない、メールの返信もない、ショートメールでも無反応を15回ほど繰り返すと涙が出てきます。それでも不動産会社としては、15,000円の課金をされている以上、追いかけるしかありません。

当然、一定数は仕方がないと思いますが、一括査定サイトによっては、送客の9割が売る気がないお客様の場合もあり、不動産会社は、恐怖でしかありません。

不動産会社からするとこの様なお客様は、可能性が極めて低いリードとして分類するのですが、この様なランクのリードばかり送り込んでくる一括査定サイトは結構多くて、何故そのような送客ばかりするのか?悔しい限りです。

それは、送客さえすれば不動産会社からお金がもらえるので、とりあえず査定だけさせるような広告をしているため起こっている問題で、恐怖でしかありません。

また、一括査定の運営側は広告活動のひとつとしてアフィリエイト広告を利用しています。アフィリエイト広告とは成果報酬型の広告で、企業の商品やサービスを紹介して、読者にその商品を購入してもらえたら報酬が発生する仕組みです。アフェリエイトに使われる広告媒体はアフェリエイト活動をする個人や企業(アフェリエイター)のブログや集客用サイトとなります。

このアフィリエイトが曲者でして、アフィリエイターは、査定の申し込み1件につき10,000円~25,000円程の報酬がもらえるため、あの手この手で一般消費者に対して一括査定を利用させるのです。

酷いケースでは、クラウドソーシングサービスを利用して「一括査定に申し込んでレビューをするだけで3,000円の報酬を支払います」といった内容で仕事として募集をする「とんでもアフェリエイター」がいるくらいです。

「自分の家じゃなくても大丈夫!家の価値を知りたくありませんか?」の様な煽り広告を見たことがある方も多いかと思います。

なぜ相場よりも高い金額が提示されるのか?

では、不動産会社は、なぜ相場よりも高い金額を提示してくるのでしょうか?それは、高い獲得コストを下げるために少しでも媒介率を上げるしかないからです。

悪い言い方になりますが、なんとしても売却希望者に媒介契約を結んでもらうため、その金額では売れないと解っていても他社より高い金額を提示して売却希望者から選ばれるためだけに高い金額を提示している可能性が極めて高いです。

高過ぎる金額を提示しても売主が「もしかしたらその価格で売れる」と思わせ(思わせ方が上手いです)結局は媒介さえ結んでしまえば、時期を見て価格改定の提案を繰り返し、売れる金額まで価格を下げ続ければ、いつかは売れるため、是が非でも媒介を結ぶことに必死になる訳です。

査定希望者がとるべき対策

高い金額を提示してきた不動産会社が一概に「悪」という訳ではなく、しっかりとした根拠が示せていれば問題ないのですが、9割以上は媒介のためだけの価格であるという、うがった見方で訪問査定に臨んだ方が失敗は減らせます。

そういった不動産会社を選んでしまった場合、考えられるリスクは、しばらく開始価格で売れなかった時、価格を徐々に下げていくパターンがほどんどですが、物件を探している消費者から見ると「SUUMOやHOME‘S、アットホームなどの不動産ポータルに掲載されているけど、ずーっと売れない物件」という印象が刷り込まれます。

いわゆるイメージ毀損が起こり「買いたくない物件」へと成り下がるリスクがあるのと「売れないのだからもっと安くなりそう」という感覚が生まれて相場より安い指値交渉を持ちかけられることも少なくありません。

そして、そこで起こる最悪のケースは、指値交渉をしてきた顧客が媒介を結んだ不動産会社の顧客だった場合、不動産会社は売主ではなく買主の味方をして、安い価格でも話を纏めようと必死に説得をしてきます。

利益相反については「売主様の利益追求」で、詳しく解説をしているので、参考にしてみてください。

ケーススタディとして実際にあったケースのお話をしてみます。

わたしたちが専門にしている地域内において海から徒歩4分ほどの物件で、相場価格5,200万円から5,300万円くらいの物件がありました。好立地のため、相場価格であれば、1ヶ月以内に売れていくようなイメージの場所でした。

取り引き履歴と売り出し履歴を基に実際の相場をご説明をした上で、5,800万円くらいを一つの目線にこの価格より高ければ時間がかかり、安ければ早まる内容でお客様ご自身で価格設定ができることをお伝えしました。

結果的に他社様で契約をされたのですが、売り出し価格はなんと7,000万円でした。

7,000万円でどうしても売り出したい場合は問題ないと思うのですが、そのリスクをしっかりと理解していない場合は問題が残ります。

相談を受けたのは11月頃で、翌年3月にお子様の学校の関係で引っ越しをされたいとのことでしたので、割とタイトなスケジュールだったのですが、結果的に翌年の6月になっても売れず、その時点での価格は5,800万円となっていました。

恐らくですが、ここまでくると完全に相場まで(もしくは若干割安まで)落とさないと売れないはずです。

では、ここまでの7か月間はなんだったのか?チャレンジにしてはリスクが高過ぎますし最終的に「いつ幾らで成約できる」のかと思ってしまいます。

ちなみに余談になりますが、これが東京の都心部、例えば港区などにある中古マンションだった場合、昨今の地合いだと時間をかければ相場が付いてくる傾向があるので、時間に余裕がある場合には成立する価格設定になってきます。

結局、査定価格とは言い値なので、幾らでも付けられることが問題なのですが、高い金額を付けたい方は、一番高い金額を付けた不動産会社にあと300万高く売り出してくれたら契約しますと言えば、その不動産会社は、300万円高くして売り出します。

つまり、多くの不動産会社は契約をしてくれるなら幾らでも良い(売れるか売れないかは関係ない)と考えているケースが圧倒的に多いということです。

査定希望者がとるべき対策は、一括査定を含め不動産会社へ査定依頼をする前に相場調査を行うことが大切です。

先ずは、ご自身で相場を調べてみる(簡単です)ことが重要で、ご自身でしっかりと調べた価格と一括査定で訪問査定に来た不動産会社が提示する価格に大きな乖離がある場合、不動産会社が腹落ちする回答を持っているか確認してみてください。

大切なことは、リスクリワードをしっかり理解することです。また、それを丁寧に説明(嘘偽り歪曲なく)してくれるかということが不動産会社選びのポイントになってくるかと思います。

下記の記事内に相場の調べ方が記述されていますので、参考にしてみてください。

簡単9ステップで不動産売却の流れを解説 【9ステップ】不動産売却の流れと対応方法を解りやすく解説

結局、高く売りたい場合は、どうしたら良いの?

相場よりも高く売り出すことは問題ありません。その方が高く売れる可能性が高いからです。ここで重要なことは相場や地合い(需給や取引量)に適した価格設定ができているかということで、ここを見極めるのがプロの仕事師です。

一括査定の査定価格についてよくある質問

なぜ、一括査定では、売れない価格を提示する不動産会社がいるのですか?
相場よりも高い査定金額を提示することで、媒介契約を結べる可能性が高くなるからです。売れないと解っていても競合他社よりも高額査定を提示して媒介契約を取ろうとしています。

逆をいえば、査定依頼者は査定額が高過ぎても何の疑いもなく高い査定を出した不動産会社と媒介契約を結ぶケースが多いのです。

査定価格が高過ぎる場合、それは実際に売れる価格ではなく、売主が喜ぶ価格を提示しているに過ぎません。
相場より高い金額で売り出すデメリットはありますか?
相場よりも高い金額で売り出すデメリットはありません。むしろ相場よりも少し高めの金額設定で売り出すべきです。

しかし相場よりも高過ぎる金額で売り出すことは危険です。高過ぎる金額設定にすることで、長期間売れず価格を下げることになりますが、売れない物件のイメージが付いてしまい売れ難い物件になってしまいます。

結果的に通常よりも時間がかかり相場よりも安い金額になってしまったという事例が少なくありません。
一括査定は使わない方が良いですか?
いいえ、一括査定を利用すること自体は問題ありません。効率的に査定を行うことができるため、便利なサービスだと思います。

先ずは一括査定へ申し込む前にご自身で相場を知ることをお勧めします。不動産会社が提示する査定額と実際の相場に大きな乖離がある場合、不動産会社に相場の話を持ち掛けてみてください。

また、価格設定の戦略(なぜその金額で売れると考え具体的にどの様に集客をするのか)についても詳しく説明を求めるのがよろしいかと思います。
自分で相場を知るにはどの様にすれば良いですか?
相場を知るためには、自分自身で不動産の売買に関する知識を学ぶことが重要です。インターネットなどを利用して、不動産に関する情報を収集し、市場情勢や物件の価値などを理解することができます。
詳しくはこちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください。